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2020年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介

公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会
中部ブロック・次世代事業委員会
委員長 岡田 心

◆2020年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介◆

中部ブロック・次世代事業委員会では、2020年度もデザイン系大学卒業制作訪問(卒展訪問)を開催し、訪問先毎に優秀な作品を選定し表彰しました。本年度はコロナ禍での開催となり、大学ごとに感染症対策をしながら、プレゼンテーション方法を工夫していただき開催することがきしましたが、やむを得ず中止となるところも多く、記憶に残る印象的なイベントとなりました。

2020年度のJIDA中部ブロックデザイン賞は以下の方々です。

2020年度JIDA中部ブロックデザイン賞

■名古屋工業大学

 2021年2月27日(土) 会場:名古屋工業大学4号館

人数制限をした上で会場にて開催しました

最優秀賞:北畠果林「pacut ―萌え断を楽しむサンドイッチボックス」


評価コメント:
手作りサンドイッチを食べる前に、真ん中を綺麗にカットする一手間を加えたランチボックスの提案。「萌え断」という料理を「映え」にする創意工夫を加えることで、料理する側と食べる側に意思疎通が生まれたり、視覚により食欲が増すことは容易に想像できる。また、パカッと開く動作もその効果の一役を担っている。金属刃を見せないようにする工夫や切ったときの中身の収まり方など、使い勝手も配慮された好感の持てる提案である。 「萌え断」や「キャラ弁」など食べ物のビジュアルを楽しむような映え文化などが定着し、卒制のテーマもこれまでの問題解決型から価値提案型へシフトしている典型と言える。(文責・後藤規文)


優秀賞:森 悟「壁にかけて楽しむ木製花器の提案」


評価コメント:
内部に鉄板を入れたベースボード上に、マグネットが組み込まれた小型の花器を自由にレイアウトする提案で、各アイテムのかたちや質感が心地よい仕上がりになっている。花器の向きが固定されていないので、添える花によって変化させることができる。シンプルな構成であるが、歪な形のベースボードの向きが決まっていないことがとても効果的で、多様なレイアウトが作れる。花を飾る人の創造性をくすぐる完成度の高い提案である。実現性が高いので、ぜひ商品化を期待したい。(文責・後藤規文)


特別賞:筒井咲良「すみっこですごすための家具」

評価コメント:
自身の幼少の頃の習慣から部屋の隅っこにこだわった家具の提案。面白いのはマグネットと簡単な木組みを利用した組み立て構造で、子供でも簡単に組んだり、バラしたりできる。テーブル天板のX構造の露出は意見が分かれるところであるが、丸い天板との組み合わせがミッフィーなどのキャラクターを彷彿とさせて、このデザインの表情を作っている。そのおおらかさにも好感が持てる提案である。(文責・後藤規文)

 


■名古屋芸術大学

 2021年2月27日(土) 会場:名古屋芸術大学・西キャンパス

人数制限をした上で会場にて開催しました

最優秀賞:柴 明良「CRC-IROMOBI」


評価コメント:
小数色覚者と一緒にゲームをクリアしながら、クルマを操縦することでリハビリにつなげる提案と理解した。共同研究者(名古屋市立大学・八木葵衣さん)の研究論文まで精査する時間はなかったが、それでも本提案の1. 小数色覚者自身による発案、2. ゲームやクルマの操縦によるリハビリの研究、3. 他大学の学生と役割分担をしながら共同で研究・デザインを行う取り組みを評価した。今後のデザイナーはさらに多くの人と一緒にモノを造ったりサービスを提供することになるだろう。それを自発的に始めていて、これからのデザイナーの在り方をよりスマートに学生の時から実践している。 (文責・堀田俊則)


努力賞:神坂天音「姫-Xinh-シン」

評価コメント:
使い勝手を検討や製造に配慮することはデザイン業務において重要であるが、単純に見た目の美しさやかっこよさも忘れてはならない。本制作はその美しさの要素を徹底的に追求しようとする気概を強烈に感じた。女性の美しさを軽やかな布のイメージに結び付け、特にクレイモデルにはその特徴が十分に表現されている。スケッチとクレイによる立体検討を何度も繰り返しており、技術的な力量とともに作業量と根気も評価した。(文責・堀田俊則)


努力賞:辻村大地「Tall Leg」

評価コメント:
4本の長い脚による歩行式の面白さに目が行く。キャタピラーよりも不整地に対応できる可能性があるし、高所作業のための形状としてまとまった回答になっている。ネガティブなイメージが残る土木作業にも、より安全で効率的な業務環境の提供は求められており、何よりかっこよくありたい。街中を歩く本重機のイメージはインパクトがあり、意外性もあいまって新しい土木作業を想像させる。(文責・堀田俊則)

 


■大同大学

 2021年2月22日(月)会場:ナディアパーク・2Fイベントスペース

前日にZOOMによるオンラインプレゼンテーション&審査会を行いました



最優秀賞:浅井美沙「ゴムの特徴を活かしたランドリー商品の開発」


評価コメント:
ゴム工場との産学共同プロジェクトで、彼女自身をペルソナにした商品開発。卒業制作にしてはプレッシャーの高い取り組みを苦労話も交えながら楽しそうにプレゼンテーションする彼女は学生ではなく、一端のデザイナーでした。素材の特性と向き合いながら、自分が描く理想を形にしていったプロセスは「こうなっちゃった」ではなく、「こうしたい!」という意図が明確で、構造やコストにも配慮したデザインは完成度が高く、何と言っても魅力的です。(文責・後藤規文)


優秀賞:成瀬 健「機能性とデザイン性を兼ね備えたダンベルセットのデザイン研究」


評価コメント:
コンセプトの新規性は欠けるが、鍛えたい部位(筋肉)と会話しながら効率的なトレーニングを模索して見つけた「原型」を魅力的な「造形」に仕上げた3アイテムのデザインプロセスは評価できる。ダンベルという特性から安全性に不安が感じられる部分もあるが、彼自身の鍛え上げられた肉体も伴ってプレゼンに説得力があり、研究テーマとしては好感が持てる。(文責・後藤規文)


M2賞:恩田寛隆、松岡拓海「マヨネーズキャップのバリエーションと可能性の研究と提案」

評価コメント:
マヨネーズキャップの形と出方について、シンプルであるが、数多くのアイデアを実際に検証し、その内容を真面目に淡々と語っていく口調にヤラれた。途中からM1グランプリを見ているかのように笑いをこらえられなかった。しかし、本人たちが語っている内容は真摯に向きあった結果の報告である。まとめ方や研究の目的について、物足らなさもあるが、コンテンツとしては妙に面白い。場を盛り上げた彼らに、M1グランプリではなく、「マヨネーズをかけ続けたコンビ」ということで「M2賞」とし、評価した。

 


■名古屋市立大学

 2021年2月21(日)会場:名古屋市立大学・北千種キャンパス


最優秀賞:高橋晶太郎「心も綺麗にする掃除道具 SINSEI」


評価コメント:
今までの生活では気付くことのできなかった音と行為の「心への影響」を感じる事ができる掃除道具の提案。掃除の印象調査からヒアリング、僧侶へのインタビューと心への影響から、動きと音の関係まで説得力のある説明と展示方法にも高い評価を集めた。何より細かな説明を聞く前から引きつけるのに十分な美しさと魅力を放っており、素直に使ってみたいと最も思わせた作品。ただ、掃除道具の「ほうき」としての完成度には疑問を感じたが、その部分は是非専門メーカーへの提案による今後の商品化に期待した。(文責:岡田 心)


優秀賞:八木貴生「wearable device:skin cara while doing housework」


評価コメント:
生活環境の変化に対応したウェラブル保湿機を、樹脂製造業者との産学協同プロジェクトにて開発。卒業研究でも目にすることの増えた産学連携だが、この完成度の高い提案には大変驚かされた。「ながら美容」を実現するため、プロトタイプによる回数を重ねたブラッシュアップの感度の高さと、スタイリングにもデザイナーとしての力量が感じられる。ただ、連携業者との関係もあるが硬質な樹脂パーツのみの構成は少し疑問を残した。製品化が楽しみ。(文責:岡田 心)

 


■名古屋造形大学

 2021年2月21日(土)会場:愛知県美術館ギャラリー8F


Youtubeによる学生プレゼンテーション、2/20にオンライン審査を行いました

最優秀賞:中原采音「ごとうち贈備食」


評価コメント:
防災用備蓄食品を調査し、「美味しくない」という不満点を解消するアイデアとして、「贈答」という人の思いをプロセスに加え、隠したいモノから飾れるものへシフトさせた着眼点は素晴らしい。また、食材ならではのご当地的要素を加え、楽しいものに仕上がっている。完成度と実現性の高い提案であるが、パッケージに既存ギフトの要素を加えるのもいいが、新しい分野の商品としてギフトとは異なる独自性のあるテイストを模索し提案力をより高めた展開も見てみたい。そんな気にさせる完成度の高い提案であった。(文責・後藤規文)


優秀賞:奥田帆南「スーパーマーケットホナミ」


評価コメント:
まずスーパーマーケットに並べられた多くのプロダクトへ誘引される群としての興味深さにひかれました。日々の観察による独自の視点が、新たな機能や面白さ、楽しさへ昇華されている点は、今後プロのデザイナーとして基礎的な力であると思いました。 ネバベタ、、は脂取り紙が入っているケースだけで外装の凹凸ディティールが納豆の入れ物を彷彿とさせWithout thoughtの世界観を持っている印象でした。ですので、納豆の入れ物とミラーは蛇足な印象です。 うどんがそのまま鍋敷きになること等は非常に面白いが、洗浄性や生産性、耐熱性などの基本を押さえた上での本人独自の抽象度を上げた造形へ昇華されることを期待します。(文責・大塚 淳/貝印株式会社デザイン部)

 

※名古屋学芸大学、名古屋デザイナー学院の卒展訪問は中止になりました。
※愛知県立芸術大学、椙山女学園大学、愛知産業大学の卒業制作展訪問は、都合により本年度は辞退されました。



主催:(公社)日本インダストリアルデザイナー協会・中部ブロック
協力:セントラル画材株式会社

 

 

更新日:2021.03.05 (金) 19:09 - (JST)]
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